東京高等裁判所 平成12年(ネ)343号 判決
主文
原判決を次のとおり変更する。
一 控訴人は、被控訴人に対し、被控訴人から一八五万六〇六〇円の支払を受けるのと引き換えに、三九四一万五九〇〇円及びうち三七五五万九八四〇円に対する平成八年五月二四日から支払済みまで日歩一〇銭の割合による金員を支払え。
二 被控訴人のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、第一、二審ともこれを一〇分し、その一を被控訴人の負担とし、その余を控訴人の負担とする。
四 この判決は、右一に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
第一控訴の趣旨
一 原判決中の控訴人敗訴部分を取り消す。
二 被控訴人の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。
第二事案の概要
事案の概要は、次のとおり加除訂正するほかは、原判決「事実及び理由」の「第二 事案の概要」記載のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決三頁三行目冒頭から同五行目末尾までを「本件は、被控訴人が、控訴人から請け負った控訴人の自宅新築工事請負契約及び追加工事契約に基づき、控訴人に対し、本工事代金及び追加工事代金合計四〇七〇万三四〇〇円及びこれに対する弁済期後の平成八年五月二四日から支払済みまで約定の日歩一〇銭の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。控訴人は、右各工事が未完成である、追加工事を発注していない、新築建物に瑕疵があるから瑕疵修補に代わる損害賠償がされるまで右各工事代金の支払を全部拒絶するなどと主張して争ったが、原判決が、追加工事に関する主張を一部認めたのみで、その余の控訴人の主張を排斥し、控訴人に対し、本工事代金及び追加工事代金合計三九七二万四九〇〇円及びこれに対する平成八年五月二四日から支払済みまで約定の日歩一〇銭の割合による遅延損害金の支払を命じたので、控訴人が、原判決中の控訴人敗訴部分の取消を求めて控訴をしたものである。」に訂正する。
2 原判決四頁一〇行目冒頭から同五頁四行目末尾までを
「3 控訴人は、被控訴人に対し、前項記載の第一回ないし第三回支払分合計一億一四六〇万円を支払ったが、その余の請負代金の支払をしない。
4 控訴人は、平成七年九月一六日ころ、被控訴人から、本件建物の引渡を受け、本件建物に入居した(乙八)。
二 被控訴人の主張
1 被控訴人は、控訴人から、追加工事として、次の内容の工事(以下『本件(一)ないし(三)の追加工事』又は単に『本件追加工事』という。)を代金合計二八五万円(消費税を含めて合計二九三万五五〇〇円)で請け負った。なお、被控訴人が追加工事をする場合は、事前に控訴人の承認を得ることが必要であったところ、本件追加工事については、事前に見積書の提出をしていないが、被控訴人は、控訴人が選任した本件工事の設計監理者株式会社五大設計の代表取締役齋藤素孝(以下、便宜上『設計監理者』という。)が、被控訴人の打ち合わせ担当者に対し、威圧的態度で接し、まともに説明をさせず、追加変更の見積書を出させなかったため、事前に見積書を提出できなかったものであり、控訴人ないし設計監理者が、追加変更工事の内容を知悉していたことを考慮すると、追加工事代金を請求することに問題はない。
(一) 木工事仕様アップ(床柱変更) 九五万円(消費税抜き)
木材という一本一本の価格にきわめて大きな開きがある材料の選定に当たっては、一本ずつ金額を打ち合わせながら選定する必要があることは自明であるところ、控訴人及び設計監理者は、床柱について、被控訴人が設計図のとおりに準備した木材を選ばず、代金が増額することを十分認識しながら、最上級のものを選んだのであるから、その差額九五万円を追加工事代金として支払う義務がある(甲二)。
(二) 一階トイレエアコン追加工事 三〇万円(消費税抜き)
設計図面では天井カセット式のエアコンからダクトでトイレ天井面まで暖気又は冷気を運び、そこから暖気又は冷気を吹き出す方式をとっていたが、天井カセット式のエアコンから一階トイレまでダクトを設置することが施工上不可能であったため、設計監理者から、エアコンを別系統にし、単独で設置するよう指示され、施工したものであり、追加工事に当たる。
(三) 地下内装工事 一六〇万円(消費税抜き)
設計図にない新たな項目について、控訴人及び設計監理者からの指示に基づき施工したものであり、追加工事に当たる。被控訴人が、サービスとして地下内装工事をする理由は全く存在しない。」に訂正する。
3 原判決七頁二行目の次に改行して
「なお、本件(一)ないし(三)の追加工事は、以下のとおり、追加工事に当たらないものである。
(一) 木工事仕様アップ(床柱変更)について
控訴人は、京都北山所在の中基銘木店において、立ち会った被控訴人の現場工事所長佐々邦宏(以下「佐々所長」という。)から、気に入った床柱を選んで下さいと言われ、床柱を選定したものである。被控訴人は、見積の詳細を知っているのであるから、控訴人の選定した床柱が、本件請負契約の予算枠を超えている場合には、その旨、指摘可能であったにもかかわらず、何の指摘もせず、建物引渡の遙か後になって、突然追加見積書(甲二)を提出して追加工事代金を請求しているのであり、本件(一)の追加工事は、追加工事とは認められない。
(二) 一階トイレエアコン追加工事について
設計図面では、天井カセット式のエアコンから吹き出す暖気又は冷気をダクトで運び、ダクトを玄関ホールで分岐させてトイレまで持ってくる計画であったところ、控訴人は、被控訴人の下請け業者から、余分に費用はかからないので、右方式を止め、トイレ内に小型のエアコンを設置させてほしい旨要請されたので、これに応じたのみであり、本件(二)の追加工事は、追加工事には当たらない。
(三) 地下内装工事について
被控訴人は、設計図面上、一階ホールから地下へ通じる入口に折り畳み式ベアリング入りの水平扉を設置することになっていたが、それがうまくいかなかったため、入り口に一枚の蓋を設置し、これをモーターで上げ下げするものにした。その代わり、被控訴人は、控訴人に対し、地下内装工事を無料で行う旨明言したので、これを了承したものであり、本件(三)の追加工事は、追加工事には当たらない。」
を加え、同五行目の「(一)ないし(七)」を「(一)ないし(八)」に訂正する。
4 原判決九頁四行目冒頭から同九行目末尾までを
「(八) 屋根雪止め瓦の設置
被控訴人は、設計図面において設置することとされている屋根雪止め瓦を設置しない。
4 瑕疵修補に代わる損害賠償及び同時履行の抗弁
(一) 控訴人は、右3のとおり、本件各工事に瑕疵が存し、その修補のため、以下のとおり、合計一一一〇万四九〇〇円(消費税相当分は別。)を要するので、被控訴人に対し、瑕疵修補に代わる損害賠償として、合計一一一〇万四九〇〇円の損害金の支払を請求することができるところ(乙四、九)、右損害金の支払を受けるまで、本件本体工事代金残金及び本件追加工事の代金の支払を拒絶する。
(1) 玄関庇部分のコンクリート打ち放し仕上げ不良 九一万円
(2) 二階寝室窓ガラスのフィルム取り外し未了 三〇万二〇〇〇円
(3) 濡れ縁の傷 五二万五〇〇〇円
(4) 外壁タイル 三三〇万六〇〇〇円
(5) 二階寝室化粧角竹の割れ 四七万円
(6) 玄関扉の取り替え 一五〇万円
(7) 南側照明器具の不具合 八万円
(8) 屋根雪止め瓦の設置 九三万二〇〇〇円
(9) 右(2) ないし(5) にかかる架設工事費等 二四三万一九〇〇円
(10) 右(1) 、(6) ないし(8) にかかる運搬費等 六五万円
(11) 合計 一一一〇万四九〇〇円
(二〇〇〇円値引き)
(二) 控訴人は、右(一)の損害金の支払を受けるまで、本件本体工事代金残金及び本件追加工事の代金の全額について支払を拒絶することができる。すなわち、本件建物の新築工事については、本件建物引渡以前から多数の手直し箇所があった上(甲四)、平成七年一二月ころ、控訴人及び被控訴人担当者らが立ち会って再検査をしたが、手直し未了又は手直し不十分な部分があったため、佐々所長において手直しを約束したにもかかわらず、その後も手直し未了の部分があり、最終検査も行われていない。加えて、被控訴人が瑕疵の存在を認めて代金の減額を主張したのは平成一一年五月二〇日付け訴え変更申立書によってであること、本件建物の瑕疵に代わる損害賠償の額が一一一〇万四九〇〇円であり、原判決認定の請負残代金額三七九二万四九〇〇円の二七・九五パーセントにも及ぶことを考慮すると、控訴人が、右損害金の支払を受けるまで、本件本体工事代金残金及び本件追加工事の代金の全額について支払を拒絶することは正当であり、信義則に反するものではない。
5 約定遅延損害金の利率について
本件契約書には四会連合協定工事請負契約約款が添付されており、日歩一〇銭の割合による遅延損害金の定めがされている。しかし、控訴人は、本件契約締結時に、右約款を見ておらず、説明を受けたこともない。また、右約款に定める遅延損害金の利率は、高金利の時代に作成されたものであり、現在では暴利ともいえるものである。したがって、このような高金利は、当事者の行為に高度の違法性がある場合など限定的な場合にのみ適用されると解するべきである。
控訴人は、本件建物の瑕疵について、被控訴人に対し、再三修補を要請したが、被控訴人が誠意ある態度を示さないため、本件本体工事代金残金の支払をしなかったものであり、正当な理由があるから、遅延損害金については、右約款に定める日歩一〇銭の割合は適用されず、民事又は商事法定利率によるべきである。
四 瑕疵等についての被控訴人の反論
1 瑕疵について
(一) 玄関庇部分のコンクリート打ち放し仕上げ不良
控訴人は、被控訴人と協議をし、被控訴人に対し、『小たたき』の方法により玄関庇コンクリート部分の段差補修をするよう指示したのであり、被控訴人は、右指示に基づき手直しを完了しており、コンクリート打ち放し仕上げの施工としては何ら瑕疵は存在しない。
被控訴人は、以上のように瑕疵に当たらないと考えるが、美観を考慮し、一〇万円(消費税別)を減額する。
(二) 二階寝室窓ガラスのフィルム取り外し未了
被控訴人は、設計監理者の指示に基づき、二階寝室窓ガラスを高性能熱反射ガラスにしたところ、設置後、近隣居住者から、太陽が反射してまぶしいとの苦情が出された。そこで、被控訴人は、設計監理者に右苦情が出されたことを報告したところ、設計監理者から、その選定にかかるフィルムを貼るよう指示されたので、指示に従ってフィルムを貼ったものである。二階寝室窓ガラスを高性能熱反射ガラスにした場合、隣家から苦情が出るのは必至であり、右ガラスにフィルムを貼ることは施工上の当然の制約であって瑕疵ではない。
なお、控訴人は、二階寝室が暗いと主張するが、これは、高性能熱反射ガラスの可視光透過率が非常に低いためであり、フィルムの影響ではない。
(三) 濡れ縁の傷
濡れ縁の黒い染みは、被控訴人が工事中に焼却炉を移動させたときにつけた傷とは無関係であって、日々風雨にさらされる濡れ縁の通例として、表面のウレタン塗装の経年劣化によりできたものであり、瑕疵ではない。
被控訴人は、建築建物については引渡後の補修が不可避であり、引渡一年後、二年後に点検をすることになっているが、引渡後の補修代金相当額三〇万円(消費税別)をサービスとして減額したものである。
(四) 外壁タイル
外壁タイルは、工場で製品検査に合格したものを使用しており、不良品があればタイル職人が除外している。タイルメーカーも本件建物の外壁タイルは最高に良いと言っており、施工に瑕疵はない。
(五) 二階寝室化粧角竹の割れ
被控訴人は、設計監理者が厳選した角竹を使用したうえ、角竹自体には加工をせず、木片を接着剤で接着させて設置しただけであり、被控訴人の施工に瑕疵はない。
天然竹を使用する限り、自然に割れが生じるのは避けられないことであり、一般に木材業者も取り替え、補修を行っていない。
(六) 玄関扉の取り替え
本件建物の玄関扉には、表面の鏡板に天然木材を使用しているところ、天然木材は、日照、風雨等の設置条件によっては、割れが入ることは性質上避けられないものであり、施工の瑕疵ではない。なお、玄関扉の鏡板に割れがあることにより乙種防火扉の認定が妨げられることはなく、玄関扉としての性能にも影響はない。
(七) 南側照明器具の不具合
被控訴人は、設計監理者の指示に基づき、指示どおりに照明器具を設置したものであり、庭を照らすことができないのは、設計監理者の指示が不適切であったためであるから、被控訴人の施工に瑕疵はない。
被控訴人は、設計監理者の施工可能な指示があれば、その指示に従って照明器具を設置し直す意思を有しており、設計監理者の指示を仰いだが、設計監理者が何ら具体的な施工方法を指示しないものである。
被控訴人は、施工の手直しには一〇万円かかることから、一〇万円(消費税別)を減額する。
(八) 屋根雪止め瓦の設置
被控訴人は、屋根の勾配が急で雪が滑ってすぐ落ちること、庇等があるので、落下した雪がそこで受け止められること、美観上も雪止めがない方が良いことから、雪止めの施工をしなかったものである。雪止めの施工をするには七万円程度の費用が必要であるので、これを減額する。
2 同時履行について
本件建物には控訴人主張の瑕疵が存在しないから、同時履行の抗弁は、そもそも成り立ち得ないが、仮に、瑕疵が存在したとしても、瑕疵は修補済みであるか、減額済みである上、瑕疵修補に要する費用はわずかであるから、控訴人が、瑕疵修補に代わる損害賠償請求権を自働債権として、被控訴人の本件本体工事残代金債権及び本件追加工事代金債権全額との同時履行を主張することは信義則に違反し、許されないというべきである。
3 約定遅延損害金の利率について
約定遅延損害金の利率は、約定のとおり、四会連合協定工事請負契約約款に定められた日歩一〇銭の割合によるべきである。」
に、同一〇行目冒頭の「四」を「五」にそれぞれ訂正する。
5 原判決一〇頁三行日の「及び修補請求」を削除し、同行目の次に改行して「5 日歩一〇銭の割合による約定遅延損害金請求の当否」を加える。
第三当裁判所の判断
一 当裁判所は、被控訴人の請求は、控訴人に対し、被控訴人から瑕疵修補に代わる損害賠償として一八五万六〇六〇円の支払を受けるのと引き換えに、本件本体工事残代金合計三七七六万七九〇〇円(消費税三パーセントを含む。)、本件追加工事代金一六四万八〇〇〇円(消費税三パーセントを含む。)の合計三九四一万五九〇〇円及びうち三七五五万九八四〇円に対する弁済期後の日である平成八年五月二四日から支払済みまで日歩一〇銭の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから右限度で認容すべきであり、その余は理由がないから棄却すべきであると判断する。その理由は、以下のとおり加除訂正するほかは原判決の「事実及び理由」の「第三 争点に対する判断」記載のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決一〇頁六行目の「甲四、八、」の次に「乙八、」を加え、同八行目の「検査が実施され」を「検査を受け」に訂正する。
2 原判決一一頁七行目の「施工したこと」の次に「、控訴人が、右<2>の内装検査後の平成七年九月一六日ころ、本件建物に入居したこと」を、同一〇行目の「終え」の次に「、その間に控訴人が本件建物に入居し」をそれぞれ加える。
3 原判決一二頁一〇行目から同一一行目にかけての「原告の現場工事所長佐々邦宏(以下「佐々所長」という。)ら」を「佐々所長らの被控訴人側」に訂正する。
4 原判決一三頁四行目から同五行目にかけての「利害や」を「利害を調整し、」に訂正する。
5 原判決一四頁三行目の「被告本人」の次に「並びに当審証人齋藤素孝」を加え、同七行目から同八行目にかけての「被告は、右指定した材木の価格等について、原告から事前に知らされておらず、」を「被控訴人は、事前に中基銘木店を下見していて材木の価格等を把握していたが、控訴人に対し、控訴人が指定した材木の価格等が見積書の価格を大きく超えることを指摘し、注意を喚起するなどせず、」に訂正する。
6 原判決一五頁九行目冒頭から同一七頁一行目末尾までを
「3 本件(二)の追加工事
一階トイレの空調については、設計図書上、天井カセット式のエアコンから吹き出す暖気又は冷気をダクトで運び、玄関ホールでダクトを分岐させてトイレまで持ってくる計画であったこと、被控訴人の下請け業者は、右ダクト工事が困難であったことから、設計監理者に対し、右方式を止め、トイレ内に小型のエアコンを設置させてほしい旨要請したこと、設計監理者は、余分に費用がかからないのであれば、トイレ内に小型のエアコンを設置することで良い旨回答したこと、その結果、被控訴人の下請業者において、トイレ内に小型のエアコンを設置したことがそれぞれ認められ(乙八、当審証人齋藤素孝、原審における控訴人本人)、右事実によれば、本件(二)の追加工事は、本件本体工事の施工としてされたものであり、追加工事に当たらないというべきである。
被控訴人は、一階トイレの空調については、天井カセット式のエアコンからダクトで分岐させることが施工上不可能であったため、設計監理者から、エアコンを別系統にし、単独で設置するよう指示され、施工したものであり、追加工事に当たる旨主張し、原審証人佐々邦宏の証言及び甲第八号証(佐々邦宏作成の陳述書)中には、右主張に沿う供述ないし陳述部分が存する。そして、当初の設計とは異なり、一階トイレに小型のエアコンが設置されていることからすれば、これにより、工事費用が増加したことも明らかである。しかし、設計監理者の齋藤が、被控訴人の前記主張を明確に否定していること、右ダクト工事が不可能であったことを裏付けるに足りる客観的証拠は存在せず、これが不可能であったとまでは認定できないところ、右ダクト工事が不可能ではなく、被控訴人の施工技術上の問題からダクト工事ができないとすれば、それにより増加した費用を控訴人側に負担させることは不合理であることを考慮すると、佐々邦彦の前記供述ないし陳述をもって控訴人又は設計監理者が、いわゆる追加工事として、一階トイレに小型のエアコンを設置することを承認したと認めることはできず、被控訴人のこの点での主張は採用することができない。」
に訂正する。
7 原判決一七頁一〇行目の「平成八年三月ころ、」を削除する。
8 原判決一八頁六行目の「被告本人の供述中には、右主張に沿う部分が存するけれども、」を「原審における控訴人本人尋問の結果中には、右主張に沿う供述部分が存するが、地下内装工事は一六〇万円にも及ぶものであり、水平扉の施工ができないということのみで、被控訴人がこのような多額な工事を無料で行う旨約するというのは不自然であり、これを否定する」に訂正し、同一一行目の「証人佐々邦宏」の次に「、当審証人齋藤素孝」を加える。
9 原判決一九頁二行目から三行目にかけての「型枠(コンパネ)のジョイント部分からの水漏れ等が原因で、わずかに色の違いが出る」を「仮枠に段差があったこと等が原因で、わずかに筋が浮き出る」に、同五行目から同六行目にかけての「その結果、」を「しかし、手直し工事後も」に、同七行目から同八行目にかけての「いまだ施工上の瑕疵とか不完全であるとまではいえず、仮に瑕疵があるとしても」を「玄関庇コンクリート打ち放し仕上げについて瑕疵があることは明らかであるが」にそれぞれ訂正し、同九行目末尾に続けて「なお、控訴人は、玄関庇コンクリート打ち放し仕上げの瑕疵を修補するには九一万円を要する旨主張するが、これは、従前施工したコンクリート打ち放し仕上げを一旦斫り、仮枠等を解体した上、新たにコンクリートを打設するというものであるところ(乙九)、右瑕疵がわずかに筋が浮き出るといった程度のものであることに照らすと、手直しのため工事を全部やり直すという趣旨の控訴人主張の方法は、修補のため過分な費用を要することになり相当でないから、採用することができない。」を、同一一行目の「甲七、八、」の次に「乙四、五、当審証人齋藤素孝、」をそれぞれ加える。
10 原判決二〇頁九行目の「現在に至っていること、」の次に「被控訴人は、二階寝室窓ガラスを高性能熱反射ガラスにした場合、隣家から苦情が出るのは必至であり、右ガラスにフィルムを貼ることは施工上の当然の制約であって瑕疵ではない旨主張し、現在では、右ガラスに貼付されたフィルムを剥がすのを拒否していること、右ガラスに貼付されたフィルムを剥がすとすれば、剥がす手間、接着剤洗浄の手間、ガラスを傷つける可能性等を考慮すると、費用的には、ガラスを交換した方が安上がりであること、ガラスを交換するための費用としては三〇万二〇〇〇円を要すること、」を加える。
11 原判決二一頁一行目冒頭から同二二頁五行目末尾までを「右事実によれば、被控訴人は、当初の約定のとおり、二階寝室窓ガラスに貼付されたフィルムを剥がす義務を負っており、これが剥がされていない状態の本件建物には瑕疵があると認められるから、被控訴人は、右瑕疵の修補に代えて、三〇万二〇〇〇円の限度で損害賠償義務を負うというべきである。」に訂正する。
12 原判決二三頁一行目の「劣化したため、」の次に「板面に」を加え、同二行目の「余り」を削除し、同七行目の「染み」の次に「は、ウレタンの劣化が原因である可能性が強く(原審証人佐々邦宏)、右染み」を加える。
13 原判決二四頁三行目の「甲五」を「甲四」に、同七行目の「合格したものを納入し」を「合格したものの納入を受け」にそれぞれ訂正する。
14 原判決二六頁四行目の「記載部分」の次に「及び当審証人齋藤素孝の証言」を加え、同一〇行目冒頭から同二七頁八行目末尾までを「本件建物の玄関扉表面の鏡板には天然木材が使用されているところ、遅くとも平成八年一月ころまでの間に、右扉の鏡板が割れて縦に筋が入った形になっていること(甲四、乙三の7)、右扉は、本件建物の正面玄関に設置されたものであり、新築建物の玄関として考えた場合、割れた扉が設置されていることは著しく美観を損ねるものであって補修する必要があること(乙三の7)、さらに、右扉は、木質系乙種防火扉認定品になっており、この面から鏡板の割れを補修する必要があること(甲一二、乙五、当審証人齋藤素孝)、右扉については、他の部分の色調との調和の問題があり、鏡板の部分的な補修ではなく、扉全体の取り替えが必要であり、そのためには一五〇万円が必要であること(乙九、当審証人齋藤素孝)がそれぞれ認められる。したがって、被控訴人は、控訴人に対し、右扉の瑕疵修補に代えて、一五〇万円の損害を賠償する義務がある。
被控訴人は、本件建物の玄関扉には、表面の鏡板に天然木材を使用しているところ、天然木材は、日照、風雨等の設置条件によっては、割れが入ることは性質上避けられないものであり、施工の瑕疵ではない旨主張するが、建物の顔ともいうべき玄関扉に割れが存在するというのは、外観上不体裁である上、居住者にとっても耐えられない事柄であることは自明であること、右扉を納入したメーカーも『天然木材を使用してあるので使用方位によってはまれに割れが入ることがある。』旨述べているのであって、竣工後わずかな期間(被控訴人が主張する本件建物竣工時期は平成七年一二月ころであり、右扉の鏡板が割れたのは遅くとも平成八年一月ころである。)で割れが生じるというのは想定していないこと(甲八)を考慮すると、右扉の鏡板の割れが瑕疵に当たることは明らかであり、この点での被控訴人の主張は採用することができない。なお、被控訴人は、以前に、同様の割れのため扉を取り替えている旨主張するが、右事実をもってしては、右認定を左右することはできないものである。」に訂正する。
15 原判決二八頁一一行目冒頭から同二九頁一〇行目末尾までを次のように訂正する。
「8 屋根雪止め瓦の設置
設計図書上、本件建物の屋根には、雪止め瓦を設置することになっていたところ、その施工がされていない(被控訴人が認めている。)。そして、雪止め瓦設置工事を施工するためには、七万円を要する(甲一〇、原審証人佐々邦宏)。なお、控訴人は、雪止めの設置工事に九三万二〇〇〇円を要する旨主張するが、控訴人の見積は、雪止めの部材の価額に比して『足場架払し』の価額が高額であり、過大請求ではないかとの疑問を払拭することができず、採用することができない。
9 瑕疵及びその修補費用の合計額
本件建物の瑕疵の修補に要する費用は、次のとおり合計二三七万二〇〇〇円(消費税三パーセント相当分を含めると二四四万三一六〇円。なお、右のうち五七万円〔消費税三パーセント相当分を含めて五八万七一○○円〕は代金から減額済み。)である。
(一) 玄関庇コンクリート打ち放し 一〇万円(代金から減額済み)
(二) 本件建物二階窓ガラスのフィルム取り外し未了 三〇万二〇〇〇円
(三) 濡れ縁の傷 三〇万円(代金から減額済み)
(四) 外壁タイル 〇円(瑕疵ではない)
(五) 二階寝室化粧角竹の割れ 〇円(瑕疵ではない)
(六) 玄関扉〔鏡板〕の割れ 一五〇万円
(七) 南側照明器具 一〇万円(代金から減額済み)
(八) 雪止め工事の未実施 七万円(代金から減額済み)
四 争点4(瑕疵修補に代わる損害賠償及び同時履行の抗弁)について
請負契約において、仕事の目的物に瑕疵があり、注文者が請負人に対して瑕疵の修補に代わる損害の賠償を求めたが、契約当事者のいずれからも右損害賠償債権と報酬債権とを相殺する旨の意思表示が行われなかった場合には、民法六三四条二項により右両債権は同時履行の関係に立ち、契約当事者の一方は、相手方から債務の履行を受けるまでは、自己の債務の履行を拒むことができ、履行遅滞による責任も負わないものと解するのが相当である。しかしながら、瑕疵の程度や各契約当事者の交渉態度等にかんがみ、右瑕疵の修補に代わる損害賠償債権をもって報酬残債権全額の支払を拒むことが信義則に反すると認められるときは、瑕疵の修補に代わる損害賠償債権をもって報酬残債権全額との同時履行を主張することが信義則に反するとして否定されることもあり得るものというべきである(最高裁平成九年二月一四日第三小法廷判決・民集五一巻二号三三七頁参照)。これを本件についてみるに、被控訴人が控訴人に対して有する本件本体工事残代金債権(ただし、瑕疵修補請求権の存在を考慮して減額処理した五七万円〔消費税三パーセントを含めて五八万七一〇〇円〕は、相殺処理がされたものとして除く。)は、合計三七七六万七九〇〇円(消費税三パーセントを含む。)、本件追加工事代金は、一六四万八〇〇〇円(消費税三パーセントを含む。)であり、その合計は、三九四一万五九〇〇円となるところ、控訴人が被控訴人に対して有する瑕疵修補に代わる損害賠償請求権は一八五万六〇六〇円であり、その被控訴人請求債権に対する割合は、四・七パーセントにすぎないこと、被控訴人が、控訴人及び設計監理者からの度重なるクレームに誠実に対応し、玄関扉については取り替えたこともあること、控訴人が、別の請負契約であることが明らかな岩本登邸の工事の瑕疵と関連づけて代金の支払を引き延ばそうとし、また、外壁タイルや雪止め工事の瑕疵の主張などに見られるように、瑕疵といえないものを瑕疵と主張し、又は、瑕疵であっても修補の費用について過大請求するなど、交渉態度が不誠実であるといわざるを得ない面があることなど、本件に現れた一切の事情を考慮すると、控訴人が有する瑕疵修補に代わる損害賠償請求権をもって、被控訴人請求債権の全部の支払を拒むことができるとすることは信義則に反するというべきである。したがって、控訴人の同時履行の主張は、一八五万六〇六〇円の限度で理由があると認められる。
五 争点5(約定遅延損害金の利率)について
控訴人は、本件契約書には四会連合協定工事請負契約約款が添付されており、日歩一〇銭の割合による遅延損害金の定めがされているが、控訴人は、本件契約締結時に、右約款を見ておらず、説明を受けたこともない、右約款に定める遅延損害金の利率は、高金利の時代に作成されたものであり、現在では暴利ともいえるものであるから、当事者の行為に高度の違法性がある場合など限定的な場合にのみ適用されると解するべきである旨主張する。しかし、控訴人は、本件請負契約締結の当初から、設計監理者に設計及び施工の監理を依頼し、追加工事が問題となるときには事前に見積を徴するなど厳重に契約の管理をしていたことなどに照らすと、本件請負契約締結の際、当然、契約書に添付された四会連合協定工事請負契約約款を検討し、その内容を了知していたと認められ、加えて、日歩一〇銭の割合による違約金が高利率であるとしても、これはあくまでも違約金であって、通常どおり契約を履行していれば、問題とならないことを考慮すると、右利率よる違約金が、当事者の行為に高度の違法性がある場合など限定的な場合にのみ適用されると解することはできないというべきであり、控訴人の右主張は採用することができない。また、控訴人は、本件建物の瑕疵について、被控訴人に対し、再三修補を要請したが、被控訴人が誠意ある態度を示さないため、本件本体工事代金残金の支払をしなかったものであり、正当な理由があるから、遅延損害金については、右約款に定める日歩一〇銭の割合は適用されず、民事又は商事法定利率によるべきであるとも主張するが、右四で認定したとおり、控訴人の交渉態度は必ずしも信義に則ったものとはいえないから、右主張も採用することができない。」
二 結論
以上の次第で、被控訴人の請求は、控訴人に対し、被控訴人から瑕疵修補に代わる損害賠償として一八五万六〇六〇円の支払を受けるのと引き換えに、本件本体工事残代金合計三七七六万七九〇〇円(消費税三パーセントを含む。)、本件追加工事代金一六四万八〇〇〇円(消費税三パーセントを含む。)の合計三九四一万五九〇〇円及びうち三七五五万九八四〇円に対する弁済期後の日である平成八年五月二四日から支払済みまで日歩一〇銭の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから右限度で認容すべきであり、その余は理由がないから棄却すべきである。
よって、右と結論を一部異にする原判決は一部不当であり、本件控訴は右限度で理由があるから、原判決を右のとおり変更することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法六七条二項、六一条、六四条を、仮執行の宣言につき同法二五九条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 塩崎勤 裁判官 小林正 裁判官 萩原秀紀)